中高年の人気職種である、ビルメンテナンス(設備管理)に必要な資格について解説します。
ビルメンテナンスを目指す中高年にとって、ムダな努力を避けることは大切。
入社前に取っておくべき資格は確実に押さえ、そして、入社後には選任資格を取得し、効率よく安定したビルメン生活を送るための資格限定の参考資料です。
これらの4つが「4点セット」と呼ばれているビルメンの基本資格。
この中で重要なのは電気工事士。自家用500kW未満(※)の現場で工事をするなら、認定電気工事従事者(または第一種電気工事士)も必要になる。
さらに、4点セットに加えるとよいのは(4点セット + α)、
資格を利用する場面は少ないが、消防用設備の知識は必要。
消防用設備の自主点検、法定点検の立会い・報告書の確認、消防署の立入り対応、消防訓練等で消防関係業務にかかわることになる。消防関係に厳しいオーナーや所長も多いので、知識があるに越したことはない。
工事をしないビルメンは、乙種を取得すればよい。電気工事士を保有していると試験の一部が免除になる。
なお、資格取得後は、定期的に講習が義務付けられるので、全類制覇すると維持する時間とコストが負担になる。取りやすい設備、興味のある設備に絞って受験するとよい。
※ 500kW未満・・・「以上」ではなく「未満」なので注意。電気工事士法・同施行規則に定められている。
これらの各資格は、「4点セット」の各資格より資格手当が高額になっている場合がほとんど。さらに、選任されれば選任手当が加算される場合が多い。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)は受験資格に二年の実務が必要で、実務の証明にもなる。取得すると実務経験 + ビルメン知識を備えた一人前として認められる。
これらの資格は、転職でも有利になるので、最低一つは取得しておきたい。
ビルメンテナンス業で特に重要なのは建築物環境衛生管理技術者(ビル管)。
建物のオーナーと管理業務の受託契約をしたら、建物(特定建築物)ごとに社内から建築物環境衛生管理技術者を選任し、行政機関に届けなければならない必置の資格。
つまり、ビルメンテナンス業・ビルマネジメント業にとって、建築物環境衛生管理技術者の選任の数が会社の契約や業績に直結すると言っても過言ではなく、会社にとって資産にも等しい資格である。
ボイラー技士や電気工事士などのような自らの作業安全等に必要な資格と大きく違うのが、建築物環境衛生管理技術者の監督権限。ビルオーナーやテナント等に対して意見を述べる権限(※)が法律で定められている。ビルメンテナンスの総合監督者に相応しい資格であると言える。
電気主任技術者も必置資格ではあるものの現在は規制緩和により、外部の電気保安法人(または外部の電気管理技術者)への委託、他の現場の選任者を併任(かけもち)できる現場が拡大され、大規模現場を除いて多くの中小ビル現場には必ずしも必要ではなくなってしまった。
かつては電気トラブルも多かったこともあり、比較的小規模な現場でも主任技術者の選任が厳格に行われ、資格者を常駐させるのがあたりまえだった時代もあった。認定制度で資格を取得するために仕事をしながら短大や専門学校(電気工学科等の認定校)の夜学に通った者もいた。
今でも伝統的な会社や現場では、選任しないのに電気主任技術者の資格保有者を配置したり、基本資格4点セットも揃っていないのに「電験」を崇拝し、受験回数を重ねている高齢の設備管理員がいたりするのは古い制度(信仰)の名残り。
ビル管と電験、どちらを先に受験すべきか悩んでいるならビル管をお薦めする。
電験と比較すれば受験の対策が立てやすいのと、合格後、選任されたときの業務の難易度、トラブル対応等、総合的にみてビル管の方が有利といえる。ビル管 + 4点セットの格上げ(一級ボイラー、一種冷凍機械等)で現場責任者や所長になっている者も多い。
ビル管を先に取り、早めに資格手当をUPしておき、電験はその次に取り組めばよいだろう。
※ 意見を述べる権限・・・請負会社の立場の従業員にとって、オーナーに意見を述べられること、及び、その尊重義務が法律に定められているのはとても重要。実際の効果は別にしても、単なるお願いやアドバイスしか出来ないのとは異なり、大きい権限といえる。
一般的な事務所ビルの場合、エネルギー管理員(講習で取得できる)を選任すればよいので、必ずしもエネルギー管理士(エネ管)の資格は必要ではない。しかし、自己啓発のために取得を奨励している会社も多い。
内容は体験に基づくものです。
(エネルギー管理士は受験したことがないので、記載してません)
第二種電気工事士
(難易度)
★★★☆☆
(コストパフォーマンス)
★★★★☆
(学習方法)
筆記は過去問を繰り返す。実技は市販のDVDを参考に練習する。
(学習期間)
2~4ヶ月
(試験実施機関)
電気技術者試験センター
(その他)
実技は練習時間が勝敗を決める。練習時間を十分確保し、手に覚えさせるようなつもりで身につけると、本試験でも失敗しなくなる。
二級ボイラー技士
(難易度)
★★☆☆☆
(コストパフォーマンス)
★★☆☆☆
(学習方法)
過去問を繰り返す。
(学習期間)
1~2ヶ月
(試験実施機関)
安全衛生技術試験協会・各地の安全衛生技術センター
(その他)
法改正で、実技講習を受講する前でも受験が可能になったが、いずれ、受講しなければならないのであれば、受験前に実技講習を受講しておくことをお薦めする。
実技講習は直接、受験対策にはならないかもしれないが、将来の職場になるかもしれないボイラー室や機械室の雰囲気をあらかじめ知ることが出来る。
第三種冷凍機械責任者
(難易度)
★★☆☆☆
(コストパフォーマンス)
★☆☆☆☆
(学習方法)
冷凍理論の基礎を理解した上で、過去問を繰り返す。
(学習期間)
2~3ヶ月
(試験実施機関)
高圧ガス保安協会
(その他)
いきなり問題集を解いてもよいが、得点が伸びないようなら初心者向けの参考書を読む方が近道。
問題文、選択肢の選び方が特有なので問題になれることも大切。
独学が難しいようなら講習・検定を受けることで科目免除される制度もあり。
乙種第4類危険物取扱者
(難易度)
★☆☆☆☆
(コストパフォーマンス)
★★☆☆☆
(学習方法)
過去問を繰り返す。
(学習期間)
2週間~1ヶ月
(試験実施機関)
消防試験研究センター
(その他)
ネット通販等のコメントで好評価の参考書、問題集を購入する。
たくさんの参考書、問題集が売られているが、何冊も手を出さず決めた一冊を信じてそれに専念するのがよい。
これらは参考です。自分に合った学習方法で行うことが合格への近道です。
建築物環境衛生管理技術者
(難易度)
★★★★★
(コストパフォーマンス)
★★★★★
(学習方法)
基本は過去問の繰り返し。苦手科目がある場合は、試験を実施しているセンターが出している『建築物の環境衛生管理』(講習用テキスト)を熟読するとよい。この本の内容から出題される場合が多い。
合格率が低下する年度もあるが、翌年度には回復する場合がほとんどなので、あきらめずに受験を続けるとよい。実務に役立つ問題も多く、学習した努力が報われる試験。
なお、職場に受験者がいる場合もあるので、試験日の勤務の調整が問題になることもある。
(学習期間)
1~2年
(試験実施機関)
日本建築衛生管理教育センター
第三種電気主任技術者
(難易度)
★★★★★
(コストパフォーマンス)取得時の年齢により異なる
若年層
★★★★★
中高年
★★★☆☆
(学習方法)
試験制度改革により、現在の第三種電気主任技術者試験は年2回行われている。期間中の希望する日時を予約して受験できるCBT方式による試験も実施されるようになり、大変受験しやすくなった(以前は年1回、指定された日時での一斉試験のみ)。
出題される問題も過去問からの出題が多くなっており、受験対策も立てやすくなっている。
そのため、過去に出題された問題をしっかり解けるようにすればよいだろう。
試験対策としては、計算問題は過去に出題された問題を中心に解法や手順を覚えるようにし、確実に正答にたどり着けるようにする。また、知識問題も過去に出題された問題を繰り返し覚えていくようにする。最近は、試験対策のスマホアプリも出ており、これを利用するのもよい。
かつての第三種電気主任技術者試験は、毎年、多種多様な珍問、奇問、難問が新しく作り出されていたため、受験者は対策に悩まされたものである。努力のほかに運も必要な試験で、科目合格の有効期限満了までに全科目合格を果たせずに挫折した者も多かったのではないだろうか。
過去に第三種電気主任技術者試験に挫折した者でも、新制度の試験に挑戦してみる価値はあるのではないだろうか。
(学習期間)
1~2年
(試験実施機関)
電気技術者試験センター
以上は参考です。自分に合った学習方法で行うことが合格への近道です。
(第三種電気主任技術者)
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